◇決算とは
・1年間の会社の業績をまとめて、貸借対照表と損益計算書を作成する(3級)
・財産がどれだけあるか、費用収益はどれくらいだったのか?を明らかにする
→決算になると商品の棚卸を行って、決算日において残っている在庫の数量、金額がどれだけあるかを計算していきます。
棚卸を行って、正確な利益を計算するのです。この場合の利益は売上総利益です。
売上総利益は 売上高-売上原価 計算式で求めることが出来ます。
売上高は、会計期間中の「売上」を集計したものです。売上原価は?販売した商品の原価のことです。
売上原価=期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 ー 期末商品棚卸高 計算式で求めることが出来ます。
決算では期末商品棚卸高を 棚卸を行い金額を出します。そして計算式に当てはめて売上原価を算定するんです。
この売上原価の算定をするための仕訳があります。ちなみに決算時に売上原価の仕訳が必要になるのは三分法という方法になります。
分記法は仕訳の際に利益を計上できるので決算時に売上原価の算定はしません。
三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3勘定を使って処理する方法です。
仕入れた時は「仕入」。商品を販売した時は「売上」。期末に残っている商品の原価は「繰越商品」勘定を使います。
→売上原価の算定方法 仕入勘定で売上原価を算定 売上原価勘定で売上原価を算定
よくある出題されるパターンが、仕入勘定で売上原価を算定する方法です。「仕入」の金額を修正していきます。「仕入=売上原価」になるように修正を行う問題には「売上原価を仕入勘定で算定すること」と記載されています。
●期末商品のみの場合の売上原価の算定方法
当期仕入れた商品が全部で150,000円あるとしましょう。全部売れたら売上原価は150,000円です。売れた分の原価が売上原価だから。
ところが、全部売れずに売れ残っちゃうこともあるわけですよ。例えば売残りの期末在庫10,000円分があったら?
その場合の売上原価は?当期商品仕入高 150,000円 から 売れていない分の期末在庫10,000円を差引いた140,000円が当期の販売分です。これが当期の売上原価になります。売上原価は仕入れた分から10,000円を差引けばいいですね。
「仕入」勘定では当期商品仕入高150,000円から期末在庫分の10,000円を差引いて、売上原価の140,000円に調整されます。
そして当期の売残りの期末在庫分は資産の「繰越商品」勘定へ計上します。
↓期末在庫がある場合は 以下の仕訳になります。
●期首商品があったら?
期首商品は前期から繰り越されている商品のことで、前期の期末商品ということです。分かりやすく言うと去年の売れ残り商品です。去年の売れ残りは当期になったら売ってしまいますよね?当期末、決算までには売れてしまったので当期の売上原価になります。当期の期首商品、「繰越商品」が販売されることによって、その原価は売上原価となります。売上原価を計算している「仕入」勘定に加算する処理を行います。販売されて繰越商品はなくなっているので「繰越商品」を減少させます。
例えば、期首商品棚卸高の原価が25,000円(当期商品仕入高は150,000円、期末商品棚卸高は0円)だった場合は、当期商品仕入高150,000円に期首商品棚卸高25,000円を加算して、売上原価は175,000円に調整されます。
↓期首在庫がある場合は 以下の仕訳になります。
●売上原価算定 問題
決算において、売上原価の算定を行う。なお売上原価は仕入勘定で算定する場合の仕訳をしなさい。
期首商品棚卸高 25,000円 当期商品仕入高 150,000円 期末商品棚卸高 10,000円
この仕訳で当期商品仕入高150,000円に期首商品の25,000が加算され、期末商品の10,000円を差引いて、165,000円の売上原価が算定されます。売上原価算の定式式 売上原価=期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 ー 期末商品棚卸高 の計算式と一致しますよね。
期首商品は加算、期末商品は減額です。これが「売上原価を仕入勘定で算定する」方法になります。
売上原価を算定したあと、「仕入」勘定は当期商品仕入高の金額から売上原価の金額に変わります。
まとめ 売上原価を仕入勘定で算定する場合
決算整理を行い、当期商品仕入高に期首商品を加算し期末商品を減算することで、仕入勘定で売上原価を算定できるわけです。
期首商品を売上原価に加算する仕訳 仕入 25,000/繰越商品 25,000
期末商品を売上原価から減算する仕訳 繰越商品 10,000/仕入 10,000
決算前の「仕入」勘定は当期商品仕入高の金額
決算整理後(売上原価算定後)の「仕入」勘定は売上原価の金額
「売上原価を仕入勘定で算定する」場合は、決算整理前と決算整理後では「仕入」勘定は内容が変わります。
「しい くり くり しい」と覚えるといいですよ。
最初の「しい くり」は期首商品の金額で仕訳。次の「くり しい」は期末商品の金額で仕訳 です。
「しい」は仕入 「くり」は繰越商品 です。
固定資産の減価償却。これも決算整理仕訳では必ずと言っていいほど登場します。
簿記3級の試験問題には必ず出題されています。仕訳問題か第5問目で登場することが多いです。
固定資産の中でも、建物や備品、車両運搬具など使用するにつれ、時の経過とともに価値が減少していくますよね?
100万円で購入した車が5年後も100万円の価値があるかというと…。ないですよね?時とともに資産価値が減少していくわけです。
この資産価値の減少分を、固定資産を使用する会計期間に費用として配分する手続きを「固定資産の減価償却」といいます。
この時計上される価値の減少分の費用を「減価償却費」として処理します。
●減価償却に関する言葉
・耐用年数 固定資産の使用可能期間のこと。
・残存価額 固定資産の使用後に残っている価値のこと。
・取得原価 固定資産を取得する際にかかっている金額のこと。
・帳簿価格 帳簿上の固定資産の金額のこと。
固定資産の価値の減少分を計算するには幾つかの方法があります。
3級で出題されるのは、「定額法」という計算方法です。これは固定資産の価値の減少額は毎期同額ですよ。と仮定する方法です。
具体的には、(取得原価ー残存価格)を耐用年数で割って1年分の価値の減少分を求めます。
例えば、取得原価が100万円の車を考えていきましょう。残存価格は0円で耐用年数が5年の場合の1年間の減価償却費は?
100万円÷5年=20万円という計算です。
では、取得原価が100万円の車で、残存価格は取得原価の10%、耐用年数5年の場合、1年間の減価償却費はどうなるでしょう?
(100万円ー(100万×10%))÷5年=18万円です。計算方法は簡単ですね。
期中に固定資産を取得した場合などは、月割計算が必要になりますので気を付けましょう。
つぎは仕訳の方法です。
直接法と間接法があります。直接法は固定資産の価値を直接減少させる方法です。間接法は固定資産の価値減少を間接的に「減価償却累計額」(資産のマイナス勘定)という勘定科目を使って処理する方法です。
価値の減少分の費用は「減価償却費」(費用)勘定を使います。
建物の減価償却の仕訳例です。
直接法は (借方)減価償却費 ○○〇 (貸方)建物 ○○〇
間接法は (借方)減価償却費 ○○〇 (貸方)減価償却累計額 ○○〇 です。貸方の違いに注目してください。
直接法は建物の価値が減ったと考えるので、貸方が「建物」です。
間接法は間接的に価値を減少させるので、「減価償却累計額」を使います。
●減価償却 問題
当期首に取得した建物(取得原価5,000,000円)について、定額法により減価償却を行う。残存価格は取得原価の10%、耐用年数は5年。記帳方法は間接法である。
計算方法:(5,000,000-(5,000,000×10%))÷5年=900,000
●期中に取得した固定資産 月割り計算
当期の4月1日に取得した建物(取得原価3,000,000円、残存価格は取得原価の10%、耐用年数6年)について、減価償却費を求めなさい。なお、減価償却方法は定額法よること。記帳方法は間接法より仕訳すること。会計期間は1月1日から12月31日までとする。
計算:(3,000,000-(3,000,000×10%))÷6年=450,000(1年分の減価償却費)
今回は4月1日に取得して決算日は12月31日まで。9か月間使用してるので、この9か月分の価値の減少分を計算します。
450,000円×9か月÷12か月=337,500(9か月分)
仕訳は↓
売掛金、受取手形が回収できない場合に備えて、決算時に貸倒引当金を設定します。
「売掛金」や「受取手形」って、債権ですよね?資産です。将来お金が回収できますよ。って権利です。
でも権利なだけで、確実に回収できるかどうかなんてわからないんです。
もし得意先が倒産してしまったら、その得意先に対する売掛金や受取手形を回収することは困難です。この売掛金、受取手形を回収できなくなることを「貸倒れ」と言います。決算時に将来の貸倒れに備えて、いくらくらい貸し倒れるのか?過去の実績から見積もりを出して「貸倒引当金」を設定していきます。
例えば、過去の実績から売掛金や受取手形のうち3%が貸し倒れていたとしましょう。期末に売掛金と受取手形を合わせた債権の金額が100,000円だった場合は、「貸倒引当金」はいくら設定すればいいのでしょうか?
計算は 100,000円×3%=3,000円 です。計算方法は簡単です。3,000円が回収できなくなるかもしれない金額です。
では、仕訳は?
回収できなくなるかもしれない3,000円は、「貸倒引当金繰入」勘定(費用)を使って処理します。
相手勘定は「貸倒引当金」(資産のマイナス勘定)を使って処理します。
実際に売掛金や受取手形が回収できなくなったときは、「売掛金」や「受取手形」金額を減少する処理を行います。
まだ決算時には貸倒れが確定したわけではなく、回収できなくなるかもしれないということで「貸倒引当金」勘定を使って処理します。
●貸倒引当金 問題
売掛金と受取手形の期末残高 150,000円にたいして、3%の貸倒引当金を設定する。
150,000円×3%=4,500円
↓仕訳は
●貸倒引当金 残高が残っているとき
決算時に計算した貸倒引当金の金額になるように調整します。当期に設定したい「貸倒引当金」が5,000円であったとします。でも貸倒引当金の残高が2,000円あるという場合には、当期の決算で5,000円の貸倒引当金になるようにすればいいので、3,000円を追加補充してあげればOKです。5,000-2,000=3,000 ですね。これは差額分を補充するので、差額補充法といいます。
問題
決算において、売掛金と受取手形の残高100,000円にたいして2%の貸倒引当金を設定する。なお、貸倒引当金の期末残高は1,500円ある。
当期の貸倒引当金金額は? 100,000円×2% =2,000円
2,000-1,500=500円 貸倒引当金は1,500円残高があるので、あと500円を補充すれば設定金額2,000円になります。
●前期に発生した売掛金、受取手形が貸倒れた場合
前期に発生した売掛金や受取手形は、前期末に貸倒引当金を設定してるので、もし当期に回収できない、貸し倒れた場合には準備しておいた「貸倒引当金」を取り崩す処理をします。
問題
前期に発生した売掛金10,000円が貸倒れた。なお、貸倒引当金の残高は7,000円である。
売掛金が回収できなくなったので、売掛金勘定を減額します。そして前期に設定しておいた「貸倒引当金」残高が7,000円あるので、それを取り崩します。残り3000円足りないので、「貸倒損失」(費用)勘定を使って処理します。
●当期に発生した売掛金、受取手形が貸倒れた場合
当期に発生した売掛金や受取手形には、決算前なので「貸倒引当金」の設定はしていません。ですので、当期に発生した債権が貸倒れた場合には全額を「貸倒損失」勘定で処理します。
問題
当期に発生した売掛金10,000円が貸倒れた。なお、貸倒引当金の残高は7,000円である。
問題文で注意したいのは、当期に発生したといっているところです。
貸倒引当金残高も7,000円あり、取り崩したくなりますが、これは前期分の貸倒引当金になりますので、当期発生分の売掛金の貸倒には使ってはいけません。全額「貸倒損失」で処理します。
当期の正しい損益を出すために必要なのが、この費用収益の繰延べ、見越しです。当期の費用、収益なのか。次期以降の収益、費用なのかを区別するために行います。期中に費用や収益として既に処理済みのものであっても、実は当期のものだけではなく、次期以降のものが含まれている事もあります。逆に、当期の費用や収益として計上しなくてはならないのに、支払いや受取りがなされていない場合は、記帳されないこともあります。それだと当期の正しい損益計算が出来ないので、決算時に当期分、次期以降分と区別をすることになります。それが費用収益の繰延べ、見越しです。
当期に支払った費用科目の中に、当期だけでなく次期の費用も含まれている場合があります。その場合は正しい損益計算をするために当期の費用から次期分を除くことになります。例えば、保険料を考えてください。毎月支払うわけではなく、1年間分をまとめて支払うことはありませんか?私は車の任意保険などは毎年一年分を支払っています。
当期が1月1日から12月31日とした場合を考えて下さい。
9月1日に、1年分36,000円を支払いました。支払ったときには (借)支払保険料 36,000 / 現金等 36,000
という仕訳をします。ですが、当期分の費用として考えると、12月末が決算になるので、9月、10月、11月、12月の4か月分が当期の費用として計上すべきものですよね?でも次期の1月から8月分の8か月分は次期の費用なので、当期の費用からは除き、次期の費用として計上する必要があるわけです。これを費用の繰延べといいます。次期分を前払いしていることになるわけです。
決算時に支払保険料の勘定から次期分を除いて、前払費用勘定(資産グループ)へと振替処理を行うことになります。
問題1.9月1日に向こう1年分の保険料 36,000円を現金で支払った。
問題2.支払保険料36,000円は、当期の9月1日に向こう1年分を支払ったものである。12月31日、決算において次期分を繰延べる。
(決算において、未経過分を繰延べる。という表現もよく使われます。)
36,000円×8か月分÷12か月分=24,000円
この、決算の仕訳で正しい当期の保険料になります。9月1日に1年分 次期分8か月分を含めた36,000円が計上されています。
決算時に、次期分の8か月分24,000円を除く処理を行うことによって、当期分の保険料、9月~12月分の12,000円が正しく計上されます。
当期中に受け取った収益科目のなかに、当期だけでなく次期以降の収益も含まれている場合があります。例えば受取家賃や、受取利息などです。まとめて1年間分を受け取った場合には当期の分だけではなく、次期分も含まれていることがあります。
その場合は正しい損益計算をするために、決算時に当期の収益から次期分の収益を除く処理を行います。
決算時に収益科目から、前受収益勘定(負債グループ)へ振替処理を行います。
問題1.9月1日に、向こう1年分の家賃24,000円分を現金で受け取った。
問題2.受取家賃24,000円は、当期の9月1日に向こう1年間分を受け取ったものである。12月31日決算において、次期分を繰延べる。
(決算において未経過分を繰延べる。という表現もよく使われます。)
24,000円×8か月分÷12か月分=16,000円
この、決算の仕訳で正しい当期の受取家賃になります。9月1日に1年分 次期分8か月分を含めた24,000円が計上されています。
決算時に、次期分の8か月分16,000円を受取家賃から除く処理を行うことによって、当期分の受取家賃、9月~12月分の8,000円が正しく計上されます。
※繰延べは、次期以降分を前もって支払った、受け取っているものなので、前払費用、前受収益と覚えましょう!
当期において、すでに費用として発生しているが、支払いが当期に行われておらず次期以降であるため、当期の費用として処理されていないものがある場合には、決算において当期の費用として計上しなければなりません。これを費用の見越しといいます。
当期の費用として発生はしているのに、契約の都合などで金銭での支払いが次期以降になり、当期に支払っていない場合は、当期中に費用計上がされていません。当期に未だ支払いがなく費用計上がされておらず、次期以降に支払いをしなければならない場合は、「次期以降に支払い義務がある」という意味合いの「未払費用」(負債グループ)勘定を用います。
問題1.8月1日、1年間にわたり建物の賃借契約を結んだ。月額35,000円の家賃は契約終了時に全額を支払うこととした。
問題2.当期の8月1日に建物の賃借契約(契約期間は1年間、月額35,000円)を結んでいる。家賃は契約期間終了時に全額を支払うことになっているが、本日12月31日、決算につき経過分を見越し計上する。
契約は8月1日なので、8月1日から家賃は発生しています。8月、9月、10月、11月、12月の5か月分が未計上です。35,000円×5か月=175,000円を次期以降に支払いをしなければならないので、「未払家賃」(未払費用)として計上します。当期中に家賃を実際に支払っていないので、支払家賃は未計上になっています。そこで決算時に当期分の支払家賃を計上する処理を行います。
当期において、すでに収益として発生しているが、受取りが当期に行われておらず次期以降であるため、当期の収益として処理されていないものがある場合には、決算において当期の収益として計上しなければなりません。これを収益の見越しといいます。
当期の収益として発生はしているのに、契約の都合などで金銭での受取りが次期以降になり、当期に受け取っていない場合は、当期中に収益計上がなされていません。当期に未だ受取りがなく収益計上がされておらず、次期以降に受取る場合は、「次期以降に受取る権利がある」という意味合いの「未収収益」(資産グループ)勘定を用います。
問題1.8月1日、1年間にわたり土地の賃借契約を結んだ。月額25,000円の地代は契約終了時に全額を受け取ることにした。
問題2.当期の8月1日に土地の賃借契約(契約期間は1年間、月額25,000円)を結んでいる。地代は契約期間終了時に全額を受取ることになっているが、本日12月31日、決算につき、経過分を見越し計上する。
契約は8月1日なので、8月1日から地代は発生しています。8月、9月、10月、11月、12月の5か月分が未計上です。25,000円×5か月=125,000円を次期以降に受け取ることが出来ます。当期中に未だ受け取れていない地代を「未収地代」(未収収益)として計上します。
当期中に地代を実際に受け取っていないので、受取地代は未計上になっています。そこで決算時に当期分の受取地代を計上する処理を行います。
※見越しは、当期分を未だ支払っていない、受け取っていないので、未払費用、未収収益と覚えましょう!